SKAJ 組織紹介
SKAJ 水沢VLBI観測所サブプロジェクト
SKA1サブプロジェクト(略称SKAJ)とは、国立天文台水沢VLBI観測所に設置されたサブプロジェクト室です。
サブプロジェクト室は「所属プロジェクトの中である程度の独自性を確保し、その活動を外部に明示することを必要とするグループ」(国立天文台運営規則)で、
SKAJは2021年度に発足したSKA1検討グループを前身に2023年度に発足し、国立天文台長より与えられた日本(国立天文台)のSKAプロジェクトへの
参加に向けた解決事項に取り組むことが使命です。
主な解決事項としては、SKA参加により日本がもたらす具体的な科学的成果の同定、日本の技術貢献案の特に人的貢献に関する一層の具体化、
そして実現可能な予算計画を含めたプロジェクト計画の立案がありますが、プロジェクト実施に必要な大型予算の獲得に目処をつけることが最大の使命といえるでしょう。
SKAJの内部組織は管理、科学、SRC、技術の部門に分かれ、2024年8月時点で水沢VLBI観測所から12名(うちSKAJを本務とし専任する者が5名)、
国立天文台の他のプロジェクト室等から3名、そして大学から9名が参加して活動しています(構成員一覧も参照)。
SKA時代を担う30-40歳代が多数を占める、比較的若い組織なのが特徴です。
データセンターの検討に関しては天文データセンター(ADC)や天文シミュレーションプロジェクト(CfCA)、
技術貢献に関しては天文技術センター(ATC)など、国立天文台が設置するセンターとも連携していきたいと考えます。
そして国内のSKAコミュニティである日本SKAコンソーシアムと特に緊密に協力しながら、
宇宙電波懇談会やVLBI懇談会といった関連コミュニティとも意思疎通を図り、
その意向に丁寧に耳を傾けながら、将来のプロジェクトの有るべき姿について検討を進めています。
そして、SKAおよびその先行機を使って、どのように科学的および技術的成果を最大化させるか、そのあり方について日夜検討を重ねています。
SKAJ 科学部門が担う、さまざまな活動のバックアップ
科学部門は、2024年9月現在で、6名で活動しています。
メンバーの内訳はSKA1サブプロジェクト所属が2名、他部署・他大学の教員が4名と、国立天文台以外の研究者が中心となって運営しています。
日本SKAコンソーシアムと綿密に協力して活動しており、各科学検討班の活動を全面的にバックアップしています。
日本SKAコンソーシアムには、科学検討班は8班あり、各科学検討班で、独自の活動を行っています。
それらの活動の統一性、活動の透明性を高めることなどを目的として、WikiやSlackの運用をし、コミュニティの意見交換の場を支えています。
この他の活動として、SKA1とその他の波長とのシナジーを掘り起こすことを目的に、ユースケース作成の提案などを行っています。
これまでに、2018年にVLBI, 2019年にALMA, 2023年にすばる・TMT、とSKA1のシナジーをユースケースに取りまとめています。
また、国際科学検討班の活動状況を報告するなど、国際研究グループとの橋渡しなどを行っています。概ね年に1回程度、
各科学検討班が主催する研究会の開催しており、その開催サポートを行っています。
また、1-2年に1回行っている、日本SKAコンソーシアム全体で行う研究会の開催も全面的にサポートしています。
センチ波・メートル波の干渉計観測の解析手法を学ぶための解析講習会を行い、コミュニティのすそ野を広げる活動を行っています。
偏波解析講習会やパルサー解析講習会、メートル波解析講習会は複数回行っています。2010年代後半以降、SKA先行機が稼働し、解析はより複雑になっています。
そこで、先行機を専門とする外国人研究者を講師として招待し、先行機に特化した解析講習会を開催しています。
また、プロポーザル作成のための講習会も行うなど、SKA1稼働時に着実に成果が出せるよう、活動しています。
SKAJ SRC部門が担う、SKAサーバーの日本拠点
SKAは、2030年代において、世界で唯一の大規模な国際共同利用型長波長電波望遠鏡システムとして機能する見通しです。
毎年1エクサバイトずつ増加する膨大なデータは、世界中で保存・解析され、研究者に提供されます。
このデータを管理するのがSKA地域センター(SRC)で、現行計画では、世界16か国にデータセンターが設置され、
それらがネットワークで接続され、分散管理されることが予定されています。
これにより、ユーザーの利便性や情報セキュリティが強化され、相互運用可能なクラウドシステムを利用して、共通の解析プラットフォームが提供されます。
JPSRCで開発中のシステムでは、学認と呼ばれるフェデレーションによる認証を通じてJPSRCにアクセスすると、
その後はどのサーバーで計算を実行しているか、またどのファイルシステムにあるデータに触れているかを気にすることなく解析を進めることができるようになります。
SRCの開発には、Scaled Agile Framework(SAFe)の手法が採用されており、2024年9月時点ではPI24(Program Increment 24)が進行中です。
また、分散ファイル共有には、CERN ATLAS実験で実績のあるRucioが検討されており、日本もその試験に参加しています。
さらに、計算および解析システムでは、openstackを基盤とした仮想化環境において、Kubernetesが複数のソフトウェア群(コンテナ)を管理する仕組みが開発されています。
日本はSRCNetの正式メンバーで、国立天文台、名古屋大学、山口大学の研究者たちが、オーストラリアや韓国のSRCと協力し、
世界各国との年4回のプラニング会議の方針に沿ってアジャイル型開発を行っています。
日本支部(JPSRC)は、2024年度中にSRC v0.1を公開することを目指し、最終的には2028年初頭までに約0.7 PFlopsの計算能力と
50 PBの記憶容量をSRCNetに提供する予定です。これにより、国際共同研究における重要な役割を果たすことが期待されています。
SKA-J 技術部門が担う、SKAへ向けた開発の取り組み
SKAは50MHzから15GHzまでメートル波からセンチ波の全帯域を網羅する究極の長波長電波望遠鏡です。
オーストラリア観測所(西オーストラリア)に50-350MHzをカバーする小型望遠鏡群(SKA-LOW)を、
南アフリカ観測所(北ケープ州カルー地域)に0.35-15.4GHzをカバーする大型パラボラ望遠鏡群(SKA-MID)を、立ち上げるべく2021年から建設が始まっています。
SKA-LOWでは256台の小型望遠鏡をおよそ40m四方内に配置し、各小型望遠鏡からの信号を合成することで1つの大きな望遠鏡を作りあげます。
このような小型望遠鏡群を65km四方の範囲に512箇所(512基の大きな仮想望遠鏡)を建設します。SKA-MIDでは、
2019年より科学観測を始めている南アフリカ電波天文台のMeerKAT望遠鏡(口径13.5mのパラボラ望遠鏡64 台)に加え、
口径15mのパラボラ望遠鏡を建設し、150km四方の範囲に全体で197基の大電波望遠鏡群が誕生予定です。
2024年にはSKA-LOW/SKA-MIDともに最初の局あるいはパラボラ望遠鏡が完成し、性能評価・調整が今まさに進められているところです。
いずれの望遠鏡も大量データを処理するデジタル技術の発展により、マルチビームフォーミングによる広視野観測や、
多モード同時観測など従来の電波望遠鏡の常識を覆す観測モードが導入されます。
またデジタル技術だけでなく、望遠鏡を含め高い要求を満たす装置の大量開発や、異なる大陸にまたがる多くの望遠鏡の科学運用、
など技術的にチャレンジングな課題が多く存在します。SKA望遠鏡の性能を最大限引き出し、「人類が経験したことの無いほどの大電波望遠鏡群を用いた観測」で期待される、
あるいは期待以上の科学的成果を生み出すために極めて重要なシステムの性能評価作業であるArray Integration Verification (AIV)や
Commissioning Science Verification (CSV)が本格的に始まります。
技術検討班では、日本の電波天文学における技術的経験を基に、SKA完成へ向け益々重要度が高まるAIVそしてCSVへ人的貢献を中心に参加すること、
さらにSKAの将来的なアップグレードなども見据えた技術的な貢献可能性について検討を進めています。